[第2部/第03回]チーム・ネットリンチとの闘い

■暗中模索の中で③

〜頼りにならない人権派弁護士〜

 女性の人権問題や地位向上運動などに取り組み、ネット上で不当な言いがかりをしてきた評論家を相手取って名誉毀損の民事裁判を起こし勝訴を勝ち取った報道を聞いた私はネット被害者の気持ちがわかってくれる弁護士ではないかと思い、その弁護士事務所にアポイントを入れ、法律相談に乗ってもらう段取りをした。

 当日、東京の事務所を訪ねたが、当初場所がわからずウロウロした。こういう、すんなり行かない時は往々にして物事もうまく行かないジンクスが自分の中にはあって、何となく気持ちが萎えてしまった。

 ようやく事務所のビルが判明し、狭い路地に回り込むと雑居ビルの入口があった。そこを入るとすぐにエレベーターがあっが、そのエレベーターは大人3人が乗ればほぼ満員になるような窮屈なエレベーターだった。私はそれに乗って事務所に向かった。

 事務所の呼び鈴を押すとテレビや新聞でも見知った顔の人物が出てきた。人権派弁護士本人だった。

「はい、なんでしょうか」

「本日、13時からお約束いただきました●●と申します。」

「あっ、法律相談ですね」

「そうです」

「法律相談はいいんですけど、今、すごく立て込んでいるので相談の時間延長はできないですけどいいですか」

相談内容も聞かないうちから時間延長できない旨を通告された。

「はい、大丈夫です」

何かうまくいかない気持ちでいっぱいになった。そんなやり取りをすると人権派弁護士は再び部屋の奥に入ってしまった。その部屋には法律事務所とは別の「NPO●●」という看板が掛かっていた。事務所一つに別組織が同居。たまに見かけるパターンだ。

 そのまま独りで入口に立っていると、秘書のような人物が現れ相談室に案内された。案内された私は30 分の間に効率的に説明を求められるだろう事を予想して、着席するなり何ものっていない、味気ないテーブルの上に、持参したパソコンをセットして収集した証拠のjpegファイルをクリックして画面に表示させた。

 暫くすると人権派弁護士が部屋に入ってきた。私は挨拶すると早速、事のあらましを話した。そして様々な誹謗中傷の実態を説明した。人権派弁護士はだまって表情も変えずに聞いていたが、私が5分ほどの説明を終えると私に向かって

「う〜ん。これ、名誉毀損と言うけど、単なる意見なんじゃないですか」と言い出した。

「単なる意見ですか?」私は驚いて聞き返した。私はとっさに、

 「でもこっちの内容を見ると明らかに名誉毀損だと素人ながら色々調べてそういう考えになっていたので、専門家の先生にご判断いただきたく今日来たんですけど」

「まぁ、政治的な発言にはつきものの批判じゃないんですか」

「いやいや、この発言は政治的な話に対してのディスりではなく、私個人への誹謗中傷の発言ですよね」と聞き返したが人権派弁護士は黙ったままだった。

 後日、この同じ部分を別の複数の法律関係者に訊ねたが、いずれも「名誉毀損は成立する」旨のコメントをもらっている。

 この人権派弁護士は自分にふりかかった事案については自分が持っている弁護士スキルを使って勝訴したのだろうが、所詮テメエのためなら一生懸命なだけの人物でしかないんだなと思い、こんな人に相談なんかしないと思った。と同時に、この人の名前を決して忘れないでおこうと自分自身に誓った。

「では、そういうことで。当初のお約束通りこれで相談は終了です」と人権派弁護士はそう言い放つと、そそくさと部屋から出ていってしまった。その直後、秘書が部屋に入って来て私に言った。

「はい、相談料は1万円になります、領収書は要りますか?」

 

 以前にも別の人権派弁護士にひどい目にあった事があるので(その弁護士は最近、テレビのワイドショーにコメンテーターとして出演しだした)この日の人権派弁護士は私に取っては二人目の人権派弁護士になった。それ以来、私は人権派弁護士を語る弁護士ほど頼りにならない弁護士なのではないかと思うようになり、人権派弁護士が大嫌いになった。