[第2部/第01回]チーム・ネットリンチとの闘い

■暗中模索の中で①

〜頼りにならない警察〜

 攻撃ツイートや個人情報晒しの証拠はクリアファイルで3冊にも及んだ。依然として連日、ネット上での攻撃は続いていた。証拠を印刷しても新しいツイートやアカウントを発見するため、いつまで経っても「最新の証拠書類」は完成しなかった。

 きりがないと判断し、とりあえず未完成ながらも最寄りの警察署に持ち込んだ。

 夜の9時半頃、近所の警察署を訪ねると夜勤の警察官が薄暗い廊下の奥から面倒くさそうに出て来た。

「どうしました?」

「先日、インターネットを見たら自分の個人情報や住居が晒されていました。とりあえず証拠を取りまとめて来ました。」と言って私は警察官に分厚いファイルを渡して見てもらおうとした。

すると警察官はファイルは受け取ってパラパラとページをめくったあと、

「建物の外観は個人情報には当たらないんですよね。で、もっと言うと、これ、全体的に見て民事案件なんですよねぇ」とゆっくりとした口調で答え、続けざまに質問してきた。

「何か身近で気になった事はありませんか?」

「いいえ、特にありません」

「誰かに尾行されるだとか、誰かから監視されているとか、そういう事はありませんか」

「特にありません」

「物が壊された、物がなくなったとかは?」

「ありません」

「じゃあ、申し訳ないですけど、警察は動けないんですよね〜」

「何とかなりませんか」と私は食い下がったが警察官は首を横に振った後、

「例えば市役所とかの生活相談で一度悩みを聞いてもらったらどうですか?」と言った。

「じゃ、とりあえずそうします」私は落胆して警察署を後にした。ネット上の事は被害が確実にあるのに他人に訴えても目に見えないが故にわかってもらえないものなのだなぁ、と思いながら家路を急いだ。

 

〜頼りにならないツイッター社〜

 警察から家に戻った。全く当てにならない警察に頼っていても仕方がないと思い、ツイッター社に対してひとつひとつ問題あるツイートを報告した。

「顔写真が晒されてます」

「登記簿謄本で個人住所晒されています」

「家族のフルネーム晒されています」

「家族の住所晒されています」

「家族の名前とダッチワイフの人形が並列で晒されています」

「私のペットの名前と動物の虐殺死体が並列で晒されています」

「汚物まみれの人の写真と自宅住所が晒されています」

「肛門のドアップ写真と私の名前が晒されてます」

「お前を見ているというセリフと共に自宅の外観写真が晒されています」

 

これらは一部に過ぎない。まずは気づいたものを全て報告したが、ツイッター社の措置は動物の虐殺写真とグロテスクな性的画像だけが削除され、文字は削除されなかった。

 

『慎重に審査しましたが個人攻撃には当たらないという判断になりました。今後、身に危険がおよびそうな場合には警察に通報して下さい』

 

ツイッター社は自分たちが削除しないかわりに、私に対して警察に行くことを勧めるのが常だった。

 

警察で断られたからツイッター社に敢えて削除申請をしたのに、警察はツイッターに言えと言うし、ツイッター社は警察に言えという。まるで循環参照である。解決にはほど遠かった。警察もツイッター社も本当に頼りにならなかった。